ARBITRATION AND MEDIATION CENTER 紛争処理パネル裁定 N. M. Rothschild & Sons Limited 対 Whois Privacy Protection Service by VALUE-DOMAIN / Ai Kirishima, Personal 事件番号 D2022-1235 1. 紛争当事者 申立人は,N. M. Rothschild & Sons Limitedであり,その住所地は英国である.申立人の代理人は, Freshfields, Bruckhaus, Deringerであり,その住所地は英国である. 被申立人は,Whois Privacy Protection Service by VALUE-DOMAIN / ai kirishima, Personalであり,いずれも その住所地は日本国である. 2. ドメイン名および登録機関 紛争の対象であるドメイン名. 本件ドメイン名の登録機関GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.com以下「登録機関」. 3. 手続の経過 本件申立書は,2022年 4月 7日に英語にて WIPO仲裁調停センター以下「センター」へ提出された. センターは 2022年 4月 8日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関 GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.comに要請した.2022年 4月 11日に GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.comはメールによりセンターへ登録確認の返答をし,申立書に記載さ れた被申立人および連絡先細目と異なる情報を当該ドメイン名の登録者として公開した. センターは申立人へ 2022年 4月 12日に登録機関により公開されたドメイン名登録者および連絡先細目を 通知した.それに伴い,申立人は申立書を訂正することができると案内された.2022年 4月 12日に,セン ターは手続言語について両当事者に英語と日本語で連絡を送り,申立人は申立書の補正書の日本語版を 2022年 4月 14日にセンターへ提出した.被申立人は手続言語に関して意見を提出しなかった. センターは申立書および補正書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下「処理方針」),統一ドメイン名紛争処 理方針手続規則以下「手続規則」および WIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則以下「補則」にお ける方式要件を充足していることを確認した. 手続規則第 2条および第 4条に従い,センターは本件申立を被申立人に通知し,2022年 4月 19日に紛争処 理手続が開始された.手続規則第 5条に従い,答弁書の提出期限は 2022年 5月 9日であった.被申立人 は,期日までに答弁書を提出しなかった.したがって,センターは,2022年 5月 13日に被申立人の懈怠を 2頁 通知した. センターは,加藤照雄 (Teruo Kato) を単独のパネリストとして本件について 2022年 5月 25日に指名し た.紛争処理パネルは,同パネルが正当に構成されたことを確認した.手続規則第 7条の要請に従い,紛争 処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した. 4. 背景となる事実 申立人によると,申立人およびそのグループである Rothschild & Coグループは,世界中でサービスを提供 する金融業界で名声のある市場リーダーであり,Rothschild & Coグループは過去 200年間にわたり金融サ ービスの大手であり,特に大手企業,一族,個人,および政府に対し,M&A,戦略および資金調達顧問およ び投資資産管理ソリューションを提供している. 申立人によると,申立人および関連企業は,ROTHSCHILD & CO および ROTHSCHILDの多くの商標の登 録者であり,あるいはそれらの商標に対し権利を有している. 申立人および関連企業が所有する商標には以下が含まれる. 1998年 10月 8日に登録された欧州連合商標登録第 000206458号 ROTHSCHILD及び 2018年 10月 31日 に登録された欧州連合商標登録第 017924819号 ROTHSCHILD & CO. 争いの対象であるドメイン名はであり,登録機関によると,これは 2021年 8月 29 日に作成され,直近の登録では Personalの ai kirishimaが登録者として記載されている. 申立人が提出した 2022年 3月 28日時点での本件ドメイン名でのウェブサイトのスクリーンショットに は,「This site can't be reached」から始まるエラー・メッセージが表示される. 5. 当事者の主張 A. 申立人 申立人は,本件ドメイン名は申立人が有する登録商標に同一または混同させるような類似性を有し,また, 被申立人は当該ドメイン名について権利または正当な利益を有さず,更に,当該ドメイン名は不正の目的で 登録かつ使用されていると主張し,本件ドメイン名の申立人への移転を求めている. B. 被申立人 被申立人は答弁書を提出していなく,事実上および法律上の主張をしていない. 6. 審理および事実認定 6.1 手続き面について手続言語 登録機関GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.comは本件ドメイン名の登録合意書の言 語は日本語と確認し,これを受けて申立人は申立書の補正書の日本語版を提出している.以上のことから当紛争処理パネ ルは,本件審議の手続言語を日本語と認定する. 3頁 6.2 実体面について A. 同一または混同を引き起こすほどに類似しているかどうか 紛争処理パネルは処理方針第 4条(a)(i)に沿って,まず申立人が登録商標を保有しているかどうか,そして紛 争の対象であるドメイン名がその登録商標と同一または混同を引き起こすほどに類似しているかどうか,の 順で判定する第一の要件. まず登録商標について,申立人および関連企業は,ROTHSCHILDとROTHSCHILD & COの商標登録を複数 の管轄区域で所有し,これらの自作一覧表を申立人は提出している. 当紛争処理パネルはその中から,1ROTHSCHILDについて欧州連合商標登録番号 000206458登録日 1998年 10月 8日,指定役務区分第 14類,第 35類,第 36類が,及び2ROTHSCHILD & COについて 欧州連合商標登録番号 017924819登録日 2018年 10月 31日,指定役務区分第 35類,第 36類が,そ れぞれ Rothschild & Co Continuation Holdings AGを権利者として存在していることを認める.以下,両 商標を「ロスチャイルド商標」と呼ぶ. この点,申立人は「実際に登録を保有する関係組織との調整により,申立人は ROTHSCHILD商標を使用す るライセンスを既に取得している」と申立書に表明しており,よって本件審議の目的上は,申立人がかかる 「ロスチャイルド商標」に関わる権利を所有していると認定する.WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions, Third Edition"WIPO Overview 3.0"の 1.4.1項参照. 続いて同一性・類似性について,当紛争処理パネルは本件ドメイン名と上記の申立人が権利を所有している ロスチャイルド商標の比較を行う. これに関して,WIPO Overview 3.0の 1.11項は,ドメイン名の中に含まれる".com", ".club", ".nyc"等のトッ プ・レベル・ドメインTLDは登録に際して標準的に求められるものであり,いわゆる「new gTLDs」の 場合を含み,これは第一の要件同一性・類似性の検討の目的上は考慮しないとする.これに沿い,本件 においても TLDである".tokyo"は考慮外とする. 続いて,TLD以外の紛争対象ドメイン名を見るに,申立人のロスチャイルド商標の内1ROTHSCHILDの観 点からは,紛争対象ドメイン名は申立人の商標と"and"と"co"という語から構成されるところ,これらは一般 的な語であり,よって,紛争対象ドメイン名の中で識別力を持つものは "rothschild"と認められる.また, ドメイン名にはそもそも大文字・小文字の区別がないことから,この箇所は申立人の登録商標 ROTHSCHILDと同一であり,よって紛争対象ドメイン名は申立人のロスチャイルド商標の内1 ROTHSCHILDの全てを包含している. また,申立人のロスチャイルド商標の内2ROTHSCHILD & COの観点からは,紛争対象ドメイン名の中の "and"は申立人のロスチャイルド商標の中の"&"と同意義である.また,紛争対象ドメイン名の中の"co"は, ドメイン名には大文字・小文字の区別がないことから,申立人のロスチャイルド商標の中の"Co"と同一であ り,よって紛争対象ドメインは申立人の登録商標2ROTHSCHILD & COと実体的に同一と認められる. 以上に鑑み,当紛争処理パネルは,本件ドメイン名は申立人が保有する登録商標と同一または混同を引き起 こすほど類似していると認定する.WIPO Overview 3.0の 1.7項,1.8項参照. よって処理方針第 4条(a)(i)所定の第一の要件は充足されたと判定する. B. 権利または正当な利益を有しているかどうか 第二の要件をうたう処理方針第 4条(a)(ii) について,その第 4条(c) に,以下の状況のいずれかが認められる 場合には,被申立人がそのドメイン名についての権利または正当な利益を有していることが⽴証されたもの とする旨の定めがある.即ち, (i) 被申立人が,この紛争についての通知を受ける前に,善意による商品またはサービスの提供を⾏なうため に,そのドメイン名またはこれに対応する名称を使⽤していたとき,またはその使⽤準備をしていたことを 4頁 ⽴証可能なとき, (ii) 被申立人個⼈,会社または団体としてが,その商標権を保有していなくても,そのドメイン名の名 称で⼀般に知られていたとき, (iii) 被申立人によるそのドメイン名の使⽤が,消費者の誤認に乗じて商業的利益を得るためにあるいは問題 とされている商標を汚し貶めるような意図で使⽤されているのではなく,正当な⾮商業的使⽤または公正な 使⽤であるとき. これに係る UDRPのパネルのコンセンサスは,まず,対象ドメイン名についての権利または正当な利益を 被申立人が持っていないことを疎明する義務が申立人の側にあり,そして一旦この疎明がなされたならば, 挙証義務は被申立人に移るとされる.WIPO Overview 3.0の 2.1項参照. 本件において申立人は,「被申立人は紛争対象ドメイン名における権利も正当な利権も有していない.被申 立人と申立人の間には何らの関係性もない.また「Rothschild」も「Rothschild & Co」も,記述的な用語で はなく,申立人は「Rothschild」という名称,ROTHSCHILD & COという商標,または ROTHSCHILD商標 のいずれの使用も被申立人へ許諾またはそれ以外の形で許可していない.申立人が知る限り,被申立人は申 立人の顧客ではなくその反対でもない.さらに申立人は「被申立人が紛争対象ドメイン名によって一般的に 知られているという証拠をこれまで見つけていない.」と主張する. また申立人は,「被申立人は,物品またはサービスの真正な提供に関連して紛争対象ドメイン名を現在使用 しておらず,使用したこともないまたは証明可能な使用するための準備を行っていないまたそうする こともできない.なぜなら 2022年 3月 28日の時点において紛争対象ドメイン名はアクティブなウェブ サイトとなっていないからである . .紛争対象ドメイン名は非アクティブな状態に維持されているため, 被申立人は,紛争対象ドメイン名の正当な非商業的または公正な利用も行っていない.」と主張し,それを 支持する証拠を提出している. 当紛争処理パネルはかかる主張と証拠を検討し,上記主張の疎明に求められる水準が満たされていると判定 した. 他方,被申立人は申立人による主張に対する一切応答を行っておらず,上記の申立人による主張に対する異 議を表明する機会があったにも拘わらずこれを行っていなく,よって被申立人に移った挙証義務が果たされ たとは言えない. また上記に引用した処理方針第 4条(a)(ii)と第 4条(c)にうたう防御の援用もしていな い. 以上に鑑み,当紛争処理パネルは第二の要件が充足されたと判定する. C. ドメイン名が悪意で,登録かつ使用されていること まず悪意の登録について,申立人が権利を保有するロスチャイルド商標は,被申立人が紛争対象ドメインを 取得した 2021年 8月 29日のはるか前に登録されていたこと,そしてロスチャイルド商標はかかる取得の 前から日本を含む世界の主要各国において広く知られていたことが認定され,よって被申立人はその取得の 時点において申立人のロスチャイルド商標を認識していたことが認められる. 続いて悪意の利用について,現時点で本件ドメイン名にアクセスするとエラー・メッセージが表示されると ころ,申立人は WIPO Overview3.0 の 3.3項に言う"passive holding"が該当すると主張する. その同パラ グラフを以下引用する.注これは当紛争処理パネルによる参考訳であり,センターの公式翻訳ではな い. UDRPの開始当初から,パネリストは,ドメイン名の不使用空白または「coming soon」ページを含む は,受動的保有の原則に基づく悪意の認定を妨げないとしています.パネリストは各案件の状況を総合的に 判断しますが,受動的保有原則の適用に関連すると考えられてきた要因には以下のものが含まれます.(i) 申 立人の商標の識別性や評判の程度,(ii) 被申立人が回答を提出せず,実際の使用や予定されている善意の使 用の証拠も提出しなかったこと,(iii) 被告が身元を隠したり,偽の連絡先を使用したこと登録契約に違反 していると認識される,そして,(iv) ドメイン名が善意の使用に供されることが考えづらいこと. 5頁 上記の(i)から(iv)の要因を本件において検討するに,当紛争処理パネルは以下の通り考察する. (i) 申立人のロスチャイルド商標は金融市場において確たる名声を持っていると言える. (ii) 被申立人は本件審議に参加していなく,よって何らの抗弁もしていない. (iii) 被申立人は登録に際して自らの正体を現さない代理人サービスを利用しており,しかも,被申立人が登 録機関に通知していた連絡先住所の地番はその一部を欠いており,建物の特定が困難な不完全なものであ る. (iv) 日本を含み世界の主要各国において「ロスチャイルド」関連の商標登録がなされており,また申立人は 従前からをそのメインのホームページとしていることから,紛争対象ドメインを通 常考えられるホームページとして合法的に利用するには多くの困難が生じるものと思われる. 以上に鑑み本件において"passive holding"の法理を採用し,被申立人の悪意の利用を認める. 上記のことから,当紛争処理パネルは第三の要件が満たされたと判定する. 7. 裁定 以上の理由により,処理方針第 4条(i)項および手続規則第 15条に従い,紛争処理パネルは当該ドメイン名 を申立人へ移転することを命じる. / 加藤照雄 Teruo Kato / 加藤照雄Teruo Kato パネリスト 日付2022年 6月 8日
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